November 13, 2017
宝物感のある本/『イイダ傘店のデザイン』
飯田純久『イイダ傘店のデザイン』(パイインターナショナル 、2014))
オリジナルのテキスタイルをデザインし、オーダーメイドの雨傘と日傘を制作している、イイダ傘店の飯田純久さん。
表紙に使われているのは、飯田さんがデザインした傘のテキスタイル。
上野リチのデザインした壁紙や、森野美沙子さんの押し花を思い起こしました。
久しぶりに宝物感のある本に出会った感じです。
さまざまなアイデアがほどこされた傘も、傘の制作にまつわるエッセイも、素敵です。
各地の工場や職人さんと手をたずさえ、一つ一つ手作りで傘を制作している飯田さん。だからと言って、一点物が大量生産されている既製品より上回っている、なんて言わない。ビニール傘も便利で大事と言ってくれる。
年に2度開かれているという展示会。
6月、青山のスパイラルマーケットで開かれていた「イイダ傘店 梅雨の傘店」へ行ってみました。
傘と、テキスタイルを生かした小物あれこれが展示されていました。
傘はすべてクルクルと閉じられた状態で並んでいました。
スペースの関係かもしれませんが、これは勝手に予想外。
実際に手にとって開いてみないと良さはわからない。
そう思って、気になった日傘と雨傘を1本ずつ鏡の前でオープン!
「ミモザ」(だったかな?)という名前の、黒地に黄色いミモザの花が刺繍された日傘は、裏から見ると、刺繍地が木漏れ日のように見えて、きれい。
木製の茶色い持ち手と柄も手にしっくりとなじんで、その感触は後になっても忘れがたい気持ちよさでした。
赤い実をあしらった「黒胡椒」という名前の雨傘をひらくと、まるで好きなものに囲まれた自分の部屋にいるような居心地。この感覚には静かに感動。
鏡を見ると、「ミモザ」も、「黒胡椒」も、物語を感じる雰囲気がありました。
『イイダ傘店のデザイン』を手にしたときと同じような、宝物感を感じました。