December 15, 2017

こんなお店(会社)があったとは/『サイゼリヤ革命』



山口芳生
サイゼリヤ革命 世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話(柴田書店、2011)

前回、ご紹介した『未来食堂ができるまで』。
未来食堂の店主・小林せかいさんの、いろんなタイプのお店でつんだ修行話も、とても面白かったのです。
なかでもサイゼリヤの話は印象的でした。実際に現場を経験して、「すごい」と思うことが多々あったようです。

サイゼリヤが、科学的・合理的な視点で価格や店員のオペレーション(仕事の手順・動作)など、経営に反映させている会社だと新聞記事で読んだことはありました。
そこで、サイゼリヤのことを知りたくなって、『サイゼリヤ革命』を読んでみました。

ふつうは原価をもとに価格を決めていくけれど、サイゼリヤでは「手頃な価格でお客さんにイタリア料理を楽しんでほしい」と、まず価格設定してから、どうコストを近づけていくか取り組んできたのだそうです。
お手頃価格で有名なお店ですが、お客さまに提供したいコンセプトがしっかり。

これも前々回ご紹介した『マーケット感覚を身につけよう (ダイヤモンド社、2015)の中の、「先に考えるべきはコストではなく、市場で認知される価値の大きさ」という話とつながって、目からウロコでした。

ある店舗が繁盛したら、忙しさで従業員が疲弊しないよう、すぐ近くに新店舗を作ってお客さまの数が集中しないようにしたり。
ある動作を2回繰り返すのと1回ですむのとでは、従業員の疲労が違ってくるからと、無駄な動作をしなくてすむよう考えられたオペレーションのマニュアルが作られていたり。
お客さまに喜ばれることはもちろん、働いている人たちに、気持ちよく仕事してほしいと考えられた仕組みも素晴らしかったです。

なにより、創業者の正垣泰彦さんが魅力的な人物。
お店を始めて店舗を広げてゆく数々のエピソードといい、おいしい素材を提供するために農場を開拓し、日本の産業(農業の改革)へも目を配る視野の広さまで、正垣さんの地力を感じる一冊でした。