September 2, 2017

彫刻家・佐藤忠良さんの描いた絵本/『おおきなかぶ』



A・トルストイ再話 /内田莉莎子訳 /佐藤忠良画
おおきなかぶ(福音館書店、1966)

佐藤忠良(ちゅうりょう)さんの彫刻に出会ったのは、社会人になってずいぶんと経ってからでした。

「佐藤忠良展 ある造形家の足跡」を見に行ったときのこと。
(世田谷美術館、2010年12月23日〜2011年3月6日)

コートを着た女性が両手を胸にあてている「冬の象」の前に立つと、呼吸している胸の動きが伝わってくるような、向き合ってお互いの呼吸が呼応しあっているような、不思議な感覚に。
彫刻を前にこんな感覚に陥ったのは初めて。
ブロンズ像なのにあたたかみさえ感じました。

また別の女性の像では、ふくらはぎや足首あたりの造形が、毎日自分で見て触れている形とまったく違和感がなくて、その描写力にドキドキしました。

「デッサンは彫刻」とは長沢節さんの名言。
社会人を経てから桑沢デザイン研究所で学んでいたとき、彫塑の授業で手を動かしながら、彫刻もまたデッサンなのだと感じたことがあります。

忠良さんの彫刻を見ていて、そのときのことを思い出しました。
デッサンの力を感じました。

忠良さんは、福音館書店のロングセラー絵本『おおきなかぶ』の絵を描いていた方。じつはとても身近なところにいた人だったのでした。