October 27, 2017

元祖? 元素のキャラクター絵本/『なかよしいじわる元素の学校』


どろぼう がっこう』などのお話絵本も楽しい加古里子さん。
科学絵本もたくさん創り出していらっしゃったことを思い出して、さがしてみると……ありました、周期表の絵本が!

元素の世界へと案内してくれる科学絵本。
元素が親しみやすくキャラクター化されていて、寄藤文平さんの『元素生活(化学同人、2009)の前に、さきがけていた人がいたことに感動しました。

加古さんからも、絵本づくりを監修し、加古さんに依頼した日本化学会の方からも、化学への愛情が伝わってくる本です。
化学熱がじわ〜んとあたたまりました。

今はもう入手できないようですが、図書館などで置いてありましたら、ぜひ。


October 20, 2017

情報と心意気がつまったデザイン雑誌/『デザインのひきだし』

デザインのひきだし(グラフィック社、2007年〜)

デザイン・印刷・紙・加工に関する情報誌。

たとえば、2016年10月発売の29はなんと、表紙も本文用紙もオール和紙!
手にとって読んでいると……和紙の手触りが心地よく、なんだかほっとした気分に。
温泉であたたまったときのよう。
はぁぁぁ。と、何度も声に出す始末。



このほっと感は軽さから来ていることにも気づきました。
和紙は洋紙に比べて、紙の密度が低いので、空気を含んでふわっと嵩高(かさだか)
軽さ(重さ)がこんなにも気持ちを軽くしてくれるとは。
道具と同じ。と、和紙のよさが体感までもできるつくりに。

毎回、こんなふうに、特集にちなんだ実験的な試みを表紙や誌面にほどこしている、チャレンジングな雑誌。
印刷や紙、加工に関する見本帖としても使えます。
毎回、驚くほどボリュームたっぷりなんです。(雑誌の厚みも)

そして毎号、扉に掲げてある言葉がよいのです。

 デザイナー、
 デザイナーへ仕事をお願いする人、
 それを受け取って印刷や加工をする人、
 みんなに役立つデザインと
 技術情報をつめこみました。
 これを読めば、知らず知らずに
 あなたの “ デザインのひきだし ” は
 一段ずつ増えていくはずです。

目的がはっきりしているというか、読む人の顔が見えているというか、作り手の心意気というか、鼻息すら(ンふッ!と)伝わってくるようで、なんとも気持ちがいいです。

以前、パッケージデザインの仕事で加工についての知識が必要になったとき、手に取ったのが最初のきっかけ。
その調べものの際には随分と助けられました。
確実に、私の中にひきだしがひとつ増えたのでした。

特集以外の記事も読み応えありで、バックナンバー全巻に目を通したくなるイキオイです。(実際、その後、全巻に目を通しました)

専門誌でありながら、いえ、専門誌だからこそのエンターテイメント。
鼻息、カモ〜ン。です。

ところでこの雑誌、誤植を見かけることが時おりあります。
(致命的なものでなくて、どれもちょっとした見落としとわかるくらいのもの)
誤植というと、ふつうはマイナスイメージ。
でも、この雑誌にかぎっては、毎回このボリューム。きっとそこまで手が回らなかったのかも……と、制作のにぎにぎしい現場が見えてくるよう。
誤植を珍しくもほほえましく感じてしまう、作り手が見えてくる雑誌でもあるのです。


October 6, 2017

これもひとつの天才論/『最前線は蛮族たれ』



釜本邦茂『最前線(フォワード)は蛮族たれ(集英社新書、2010)

「こんなとき釜本さんがいれば……」
サッカー日本代表の試合を見ていて何度そう思ったことか。
ゴールに向かうときのゴゴゴーと風が巻き起こるようなあの獰猛さ。

釜本さんの現役時代の映像を初めてみたとき、「日本にもこんな選手がいたとは!」と、感動したものでした。

その釜本さんのプロフェッショナルぶりと、日本サッカーの未来までも見渡す視点が素晴らしくておもしろかったです。

「サッカーにおいて、運が成功不成功を左右するとは考えない」
そう述べつつ、「運をつかむ」とはどういうことかが的確に書かれていて、それはサッカーに限らず言えること。深くうなずきました。

「天才と呼ばれる人は努力の仕方を知っている人であり、それがわからない人は能力の発揮の仕方を知らないから、天才になりえない」
という言葉にも。